• テキストサイズ

【テニプリ】a short story.【短編集】

第1章 【千石】片恋ラプソディ





「にしてもさ、南も部活休みだって言っておけばよかったのにね!そしたら千花ちゃんも、こんなに待たなくて済んだでしょ」


出したくもなかった南の名前を出して、何とか会話を続けようと足掻く。共通の話がこのくらいしか無い、なんて情けない。そう思いながら彼女の返答を待つ、すると彼女は大きな目をますます大きく見開いた。


「え?健ちゃんからはちゃんと聞いてたよ、部活休みだって」



――そう、その健ちゃんって呼び方。それも俺との距離をはっきりさせる要因の一つだった。初めて会話をした時、キヨって呼んでね、って言葉をスルーして、今まで頑なに苗字で呼んでいるのに――なんて事はさておき。


「あ、そーなんだ!南が居なくても待ってるなんて、てっきり知らなかったのかと思ってさぁ」
「健ちゃんは今日はデートなの、他校にいる彼女とね」


あ、これ…内緒だったっけ?そう言いながら首を傾げている千花ちゃんは抜けてて可愛い、けど、ちょっと待った――!!


「南の健チャンとは付き合ってないの!?」
「え!?何でそうなるの!?健ちゃんとそんなの考えられないし、考えたくもないんだけど!?」


じゃあ何故いつもいつも部活終わりまで待ってるの、暑くても寒くても雨が降ってても、南が居ない今日でさえも?


「と、言うより」


これだけしてて、気付かれてないとは思わなかったよ――そう、拗ねたように呟く千花ちゃん。マジか、ほんとのほんとに、そーなの!?


「…何、千石くん」


じっと穴が空きそうなくらい、彼女の顔を見つめる。彼女の顔がどんどん赤に染まっていく。いつも南の大きな体に隠されて、ちゃんと見えない顔色までしっかり伺える距離。


/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp