【テニプリ】a short story.【短編集】
第4章 【跡部】こんな未来が有るのかも知れない
「よお、手塚」
「久しぶりだな、跡部。去年の選抜以来か」
手塚くんが出てきてくれて、跡部とがっちり握手を交わす。好敵手でありながら、ゆっくり話せばすぐ良い友人になれそうな二人を微笑ましく見ていると、松元も久しぶりだったな、と声をかけられた。
覚えていてくれたことが嬉しくて手を差し出すと、私とも握手をしてくれる。テニスプレイヤーらしい、細くてしなやかだけど節ばった手だ。
「二人共、わざわざ生徒会室まで済まなかった。なかなか手が離せない用があってな」
「いや、構わねえよ。他校をゆっくり見て回ることなんかねぇからな、興味深かったぜ…おい、千花、アレはどうした」
「そーだった、手塚くん、これ!練習試合の申込書です」
持参したプリントを手塚くんに渡す。何枚かが綴られたそれを手塚くんはぺらぺらと確認し、確かに、と受け取ってくれた。やっと任務完了、と肩の荷が降りる。
「宜しく頼む、手塚。去年の全国大会覇者の胸を存分に借りるぜ」
「思ってもいないことを。…彼女が見ている前だ、無様な真似は出来ないだろう」
そうチラリ、とこちらを見て言う手塚くん。
「へ!?あ、あたし…!?」
「へぇ、お前にもわかんのかよ、手塚」
「あぁ、そうだな」
――な、なんで…と呟く私に、手塚くんはふわり、と。想像もしなかった柔らかい笑みを浮かべた。
「さっき、越前くんにも言われたんだよ…?」
「洞察力はテニスプレイヤーにとって大事な要素だ、当然だろう。…まぁ深読みしなくとも、松元、君の顔に書いてある」
――今年の跡部は手強そうだな、と。手塚くんに似つかわしくない冗談を言いながら笑う姿に、何も返せず俯く。その横で、跡部が腹を抱える勢いで笑いながら、違いねぇな――と、返した。