• テキストサイズ

【テニプリ】a short story.【短編集】

第4章 【跡部】こんな未来が有るのかも知れない





「おい、何見とれてやがる」
「み、見とれてなんかっ」


跡部のからかうような声に、ぼーっとしていた私が引き戻され、食ってかかる。そんなやり取りを面白そうに見ていた越前くんが、口を開いた。



「ねぇ、アンタたちやっとくっついたの」
「…は?」


呆けたような声を上げ、ぽかん、と口を開けたままの私に越前くんはさらに続ける。


「だってさ、もう見た感じそうだったじゃん。跡部サンの専属マネージャーかってくらいべったりくっついてて有名だったし、こっちが気を使って松元サンに挨拶しようもんなら…」
「おい、そこまでだぜ越前…アーン?」


跡部の静止に、越前くんが、肩を竦め途中で話を止める。皆がニヤニヤと見つめている、その空気にいたたまれない。


「そ、そーだ!手塚くんに用事があったんでしょ、跡部っ」
「…あぁ」


――そうだったな、と。珍しくすっかり忘れきっていた様子で、跡部が答えた。




ぺちぺちと、借り物のスリッパで歩く音が廊下に響く。お目当ての手塚くんは生徒会室にいるという――生徒会長、兼部長。全くタイプが違うのに、似た境遇の跡部と手塚くん。彼も跡部が認めたテニスプレイヤーであり、手放しで賞賛する稀有な存在だった。久々に会う彼もまた、何処か変わっているのだろうか――


そんな思いに囚われながら、先程のやり取りですっかり愛着が湧いた彼等の過ごす校舎を眺める。ボーッと歩いてはまた置いていかれる、と、たまに跡部の存在を確かめる事も忘れていなかった。


「ぼーっとして、何を真剣に考えてやがんだ」
「え?あ、うーん。越前くんに連絡先、聞いとけばよかったなぁって。さっきの話の続き、聞きたいし」


思いつきでそう言うと、あからさまに嫌な顔をする跡部。これは、長い付き合いの中だけど最近気付いた事だ。


「堂々と浮気かよ?」
「え?違うちがう、そんなんじゃないよ!一つくらい跡部の弱みを握っててもいいかなー、とね?」


軽口を叩いて、笑い合う。その中に照れずに睦言を織り交ぜられるようになったのも、本当に最近のこと。そうこうしている間に、生徒会室というプレートのついたドアの前についていた。跡部が軽くノックをするとすぐ、中から扉が開けられる。

/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp