第2章 月夜に咲くのは甘い花
花火大会の会場に着くと、この人達は普段どこに潜んでいるのだろうというくらい、どこを見ても、人、ひと、ヒト・・・で溢れていた。
縁「ほら、はぐれないように・・・」
スッと差し出された縁下さんの手を握り、隣を歩く。
澤「予想はしてたけど、凄い数の人だなぁ」
澤村先輩も、その人混みを歩きながら先へと進む。
菅「とりあえず、あの辺て1回止まろうか。田中と西谷に暴走しないように釘刺しとかないとだし」
菅原先輩の発案に澤村先輩が頷き、脇に逸れた場所に一旦集まった。
清「木下、成田。ちょっと打合せしたいから、他のみんなを捕まえてて」
そう言った清水に手招きをされて、3年生組と縁下さん、それからなぜか私が呼ばれた。
『あの、打合せっていうのは・・・買出し班とか、そういうのですか?』
これだけの人混みを、バラバラで歩き回るのは、はぐれてしまうことも考えられるから。
きっとマネージャーを含めたみんなで手分けでもするのかな?と、そんな事を考えていた。
澤「それも、いい案なんだけどね。不正解!」
清「ここから先は、縁下と池田さんは別行動」
『え?どういう事ですか?』
突然の切り離し発言に、私は瞬きを繰り返した。
澤「本当なら、2人で来たかったんじゃないか?っていう、清水の提案だよ?」
菅「そうそう、オレとしては可愛い浴衣姿のそらちゃんと一緒にいたいんだけどね」
縁「・・・スガさん?」
あはは・・・と後退りをしながら、菅原先輩はいいじゃん可愛いんだから、と繰り返した。
清「私も急な用事で宿題組の面倒見れなかったし、縁下も宿題組に付きっきりだったでしょ?だから、あとの事は私達3年が面倒見るから」
『でも・・・それじゃ申し訳ないです。大変だと思いますし』
バレー部の問題児は、2年の2人だけじゃない。
1年組だって、それなりに暴走組が・・・
旭「大丈夫だよ。いざとなったら、大地がカミナリ落とすだろうから。だから、せっかくなんだし、2人で回って来なよ?」
どうしますか?と、さり気なく縁下さんを見上げると、縁下さんも少し戸惑っているようだった。
縁「・・・いいんですか?」
菅「いいよ。アイツらに2人が居ないことを気付かれたら、オレ達も適当にはぐらかすからさ」
澤「だな。それに縁下だって・・・アレだろ?」