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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第36章 おねえさんがしてあげる【十四松】


なんで謝るの? 謝られたらすべてが間違いだったみたいに思える。ぼくはそんなつもりないのに……。

愛菜さんはぼくの腕のタオルを解くと、静かに離れた。

「あ、あのっ……愛菜さんっ……ぼく……」

床に落ちた服を一枚ずつ拾い、愛菜さんはにっこりと微笑みながら振り返った。

「雨、上がったみたいね」

「え?」

「十四松くんの服ももう乾いているはずだし、すぐに帰れるわよ? おうちの夕食に間に合うんじゃない? 雨が長引かなくてよかったわね」

「…………」

窓の外に目をやると、たしかに雨は止んでいた。藍色の空が広がっているが、西のほうはまだ赤く、沈みかけた日の名残りがわずかに残っている。

そっか。ぼくは雨やどりさせてもらうためにこの部屋に来たんだった。すっかり忘れていた……。

「服を持ってくるから待っててね。他に荷物はあったっけ? 靴も一応干していたから多少は乾いているといいけど……。忘れ物しないようにね」

愛菜さんが部屋を出ていこうとする。

ぼくは弾かれたように起き上がった。

「愛菜さん!」

「?」

再び振り返ろうとした愛菜さんにうしろから抱きつく。身体のだるさはもう消えていた。ぎゅっと力を入れて抱きしめると、愛菜さんの細い身体が一瞬震えた気がした。

「ぼく、帰らない」

「え? な、なんで?」

腕の中で愛菜さんがこっちを向こうとする。ぼくはさらに力を入れてそれを止めた。

「帰りたくないから」

「十四松くん? な、何言ってるの?」

「愛菜さんともっと一緒にいる」

静かな部屋にエアコンの音が響いている。

さっきまでの行為はただの過ちじゃない。ここから何かが始まるかもしれない。始まらなくてもぼくが始めるよ。

ぼくは愛菜さんといたいんだ。

「十四松くん……」

西の空に最後まで残っていた夕焼けも今は完全に消え失せた。ぼくと愛菜さんのいるこの部屋にも夜はひっそりとやってくる。







―END―











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