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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第35章 水とワイン/Água e Vinho【おそ松/マフィア松】


怖いよな。わかるよ。マフィアの女なんてさ、俺だったらイヤだもん。

愛菜の手が今度は水の入ったグラスへと伸びる。数回グラスを撫でると、迷ってまたワインへ。まるで蝶がフラフラと花から花へ彷徨っているみたいだ。

「オソマツさん……」

「ん?」

「オソマツさんはどっちを選んでほしいですか?」

思わず苦笑する。
「決まってんだろ。ワインだ。俺のスーツを誰かさんが見事に染めたみたいな真っ赤な色のな」

あのとき、おまえは俺の心にまで消えない染みをつけたんだ。

「じゃあ、オソマツさんがもし私ならどちらを選びますか?」

俺が愛菜なら?

グラスに視線を落とす。

「どうだろうな……。水かもな。水を選べば、今まで通り何も変わらない。親も喜ぶしさ。ワインのように悪酔いさせる輩はいない。穏やかで幸せな日々が続くからな……」

好きな女に勧める選択肢じゃない。でも本音だ。

「そう……ですよね……」

愛菜は水のグラスを握った。

「愛菜……」

彼女が静かに俺を見つめる。
「オソマツさん、決めました。私はこっちを選びます」

「そうか……」

「はい」

次の瞬間、愛菜は突然ワイングラスを掴むと、ぐいと一気に煽った。

空になったグラスを勢いよくテーブルに置く。濡れた唇の端から赤い液体が垂れた。

「おいしいワインですね」
手の甲で拭い、妖艶に微笑む愛菜。

さっきまでの不安そうな表情は消え、堂々と自信に満ちている。覚悟を決めた女の顔。

愛菜はあの男よりも俺を選んだ――。

胸に熱いものがこみ上げる。

「愛菜っ……! 来い……!」

俺は彼女の腕を掴んで引っ張り上げた。椅子が派手に倒れる音。愛菜の身体を抱きしめ、唇を奪う。

「んんっ……!」

熟れたカシスの香り。強引にねじ込んだ舌の先に触れる熱い肉と甘い唾液。俺は夢中で吸い上げ、愛菜とのキスに没頭する。


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