第33章 青春性愛ストロベリー【一松/えいが松】
《愛菜side》
目を開けると、眩しい光。思わず横を向いた。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。変な姿勢になっていたのか、首が痛い。
「あ〜、服を着替えずに寝てた……」
もそもそと起き上がり、私は周りを見回した。
いつもの自分の部屋。投げ出された鞄とコート。中途半端に開いたカーテンから朝日が差している。
「…………」
頭がぼうっとする。
昨夜はたしか出張から戻るのが遅くなって、帰ってきたらバタンと眠ってしまって……。
睡眠時間はそんなに取れていないはずなのに、まるで長いあいだ眠っていたみたい。なんだか遠い記憶に感じる。
「疲れてるのかな……」
額を押さえて、ため息をつく。ふとベッド脇に置いてあるローテーブルが目に入った。
置きっぱなしのハガキ。
『赤塚高校同窓会』の文字。
「あ、そっか。昨日だったっけ……」
結局、行けなかったな。みんなは来てたんだろうか。それに……松野くんは……。
そこまで考えて、私は「ん?」と首を傾げた。
松野くん? 松野一松くんだよね? そういえば最近どこかで松野くんを見たような気もする。
「えっと……どこで見たんだっけ……?」
高校を卒業してから赤塚にはほとんど戻っていない。松野くんとも連絡は取っていない。でもつい最近松野くんと会ったような……。夢でも見て忘れてるんだろうか?
「う〜ん、思い出せないや……」
私は立ち上がると、とりあえずキッチンに行って水を飲んだ。ここのところ仕事が忙しかったし、疲れてるだけかもしれない。今日は休みだし、のんびり過ごそう。そうだ、朝のうちに買い物にも行っておきたい。
簡単に朝食を取ると、私はすぐに出かけることにした。身支度をして、外に出る。
昨日は寒かったけれど、今日は暖かい。柔らかい日差し、道端にちらほら咲きはじめたタンポポ。仕事に追われているあいだに冬は去り、もう目の前まで春が来ているようだ。
「三月も終わりだしね……」
私は伸びをすると、歩き始めた。庭に桜を植えている家が何軒かあり、どの木も花が開きはじめている。
「そういえば、高校の卒業式のときも桜が咲いていたなぁ」
ぼんやりと思い出しながら、道を曲がった。ここを抜ければ、すぐに広い通りに出られる。少し早足で小さな公園の横を通りすぎた。