• テキストサイズ

《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第33章 青春性愛ストロベリー【一松/えいが松】


《一松side》


「松野くん?」
うしろから女の声がした。

心臓が飛び出そうになる。おれは歩きかけたままの姿勢で固まった。

まさかまた誰かに話しかけられるとは。やばい……。

「ねぇ、どうしたの? 松野くんだよね? あれ? 私服?? 一旦、家に帰ったの?」

だめだ、完全におれだと気づかれている。これはまずい……。

仕方なく振り返ると、ブレザー姿の女子高校生が立っていた。

「っ!」
顔を見た瞬間、息が止まる。

奥田……。

懐かしい顔。思い出したくなかった顔。

高校時代に好きだった女子が目の前に立っていた。

記憶の奥底に沈めて忘れていたのに、なんで今さらおれの前に現れるんだ。

「あ……え、えっと……」
おれは後ずさった。

相手が奥田だからじゃない。

誰だろうと、この世界の人と無闇にかかわっちゃいけないんだ。世界が崩壊してみんなミジンコになってしまう、らしい。いや、おれだって意味わかんないですよ。デカパンがいってただけで。

「松野くん? どうしたの? なんか髪がボサボサじゃない? 何かあったの?」
奥田は不思議そうに首を傾げた。

そうだった。こいつ、こうやってすぐにキョトンと首を傾げる癖あったよな。その仕草が妙に可愛かったんだ。

「いやっ……そのっ……おれはっ……人違いっ……」
言葉がうまく出ない。

慌てふためきながら、さらにうしろに下がる。

「人違い? 何いってるの? 松野くんでしょ? 間違えてないよ?」
奥田が一歩踏み出した。

くそっ、カラオケを出てトド松とはぐれてしまったとたん、こんな面倒なことになるなんて。こいつは大人になったおれが暗いゴミのような人間になってるなんて知らないんだ。

おれは無理やり笑顔を作った。

「あ……えっと……その……ご……ごめーん! 急いでるからさ! また今度!」

できるだけ爽やかに返し(普段ならとっくに死んでいる)、踵を返して走り出した。


/ 804ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp