第32章 咲き乱れよ愛慾の長春花【逆ハー/三国志松】
「たしかに私も一度は彼らに期待した……。しかし、赤壁での戦いにおいて、そんな器はヤツラにはないと思い知ったのだ。しかも今度は我が娘にまで手を出すとは。一度ならずも二度までもこの曹操をがっかりさせるとはな……」
ボロボロになったおそ松帝が助けを求めて手を伸ばす。
「おねーさん! そこのおっさんに誤解だっていってよぉ! 朕はただエッロいおねーさんとエッロいことして一生遊んで暮らしたいだけぇ〜! だって、働くのめんどくさいんだも〜ん! ダラダラしてたいだけなんだよぉ! そうだよな、おまえら?」
「「「「「ぎょい〜! ぎょいぎょい〜!」」」」」
全員がボロボロになりながらうなずく。
「な? こいつら、クズであろう?」
父親が呆れた顔で私を見た。
たしかにクズだ。
でも少しだけ、ほんの少しだけ……夢を見ちゃった。ワチャワチャ楽しく過ごすのも悪くないかなって。まあ、たしかに一生やってたらダメ人間まっしぐらで暗黒クソ闇地獄に堕ちそうだけど。
ほんの一瞬の夢をありがとう。ハメを外せて楽しかった。
私はくすっと笑った。
「そうですね、父上。この者たちに期待したけれど、どうやら違ったようです」
「ああ、そうだろう! 我らの見当違いだ!」
私たちは顔を見合わせ、同時に呟いた。
「「 見 誤 っ た ! 」」
いつまでも響く兵士たちの怒声と六人の悲鳴。台座の前に飾られた咲き誇る桃色の長春花。
「帰りましょうか、父上」
「そうだな……」
なんやかんやで、ここは三国志の世界。西暦208年、中国後漢末期。『松』という摩訶不思議なこの国が、本当に存在したかどうかは謎のままである……。
―終 劇―