第30章 熱帯夜【逆ハー】

「違わないよね！？　愛菜ちゃんの口を押さえて無理やり犯してたよね！？　カラ松兄さん、いくら童貞拗らせてるからってやっていいことと悪いことがあるでしょ？　おそ松兄さんたちにも言うからね？」
トド松さんは目がつり上がって、完全に怒っている。

「違うの！　たしかにカラ松さんは我を忘れていたけど、理由があって！」
私は起き上がった。

このままじゃ、カラ松さんの立場が悪くなってしまう。

「あんた、クソ松に弱みでも握られた？　脅されてるの？　レイプされて庇うっておかしいだろ……」

私はすぐそばに落ちていた白い花を拾った。

「これ！　この花！　この花のせいでカラ松さんも私もおかしくなってしまって！」

「「は？」」
ワケがわからないという顔の一松さんとトド松さん。

いきなりそんなこと言われても信じてくれないよね。なんて説明すれば……。

じっと花を見つめていたトド松さんがハッと目を見開いた。
「あ！　思い出した！　この花！　惚れ薬の花だよ！　デカパンが父さんのために惚れ薬を作ったときに原料にしていた白い花！　みんなで探しにいったよね？」

「あー……そういえば……。あのときは、途中で力尽きて現物を見なかったけど……言われてみればそんな気がする……」
一松さんも納得したように頷く。

「そ、そうなんだ、ブラザー！　この花をハニーにプレゼントしようとしたら、たまらなくなって」
カラ松さんがハハハッと苦しそうに笑った。

「だからって、女の子を襲っていいわけないでしょ！？　あと、愛菜ちゃんはカラ松兄さんの『ハニー』ではないから！」

トド松さんの声がぐわんぐわんと耳の中で反響する。

ん……？　なんだろ？　なんかぼーっとしてきた……。