第5章 それでも君が好き【チョロ松】
「うっかりって何だよ! 大体、いつも……」
「行ってきまーす!!」
最後まで話を聞かず、愛菜は飛び出していく。
あ〜あ、全く、なんでちゃんとできないんだよ。僕は新しいトイレットペーパーを棚から出す。
「これだから困るんだよな、ったく」
ブツブツ一人で愚痴りながら、トイレットペーパーをセットし、リビングに戻る。
「……ん?」
僕はあることに気づいた。
いつもは床に脱ぎ捨てられているパジャマが今日はソファの隅に無造作に置かれている。テーブルの上のメイク道具は、出しっぱなしではあるが、とりあえずのつもりなのか一箇所にまとめられていた。
「ふふっ、何だ、これ」
思わず笑ってしまう。
愛菜なりにちょっとは気をつけたつもり……なのか? 中途半端だなぁ。
「でも、僕に寄せようとしてくれてるんだな……」
逆に、僕は愛菜に何をしてあげられるんだろう?
そうだ、とりあえず、今日の夕食は愛菜の好きなハンバーグでも作ろうかな。きっと、とびっきりの笑顔でニコニコしながら食べるんだろうな。
あの笑顔があれば、もう何だっていいや。
「よし、洗濯物干したら、今日こそはハロワ行こうっと」
僕はソファの上のパジャマを拾い、テーブルの上のメイク道具を片付け始めた。
―END―