第26章 大人の社会科見学【一松】
視線を戻すと、一松さんが私たちに銃を向けていた。さっきまでの笑顔ももう消えている。
「一松さん!?」
「お前たちにはここで死んでもらう……」
銃のスライドを引く一松さん。
「ええ〜!? おじさん、急にどうしたの!?」
おそ松くんが震えながら、私の腕を掴んだ。
「意味分かんないよ!」
「おじさんが付いてきてって言ったのに!」
怯えて次々としがみついてくる子供たち。急展開すぎて、私も意味が分からない。みんなの体を引き寄せた。
「な、何なんですか!? 知りすぎたも何もパンの作り方なんて、誰でも知ってるでしょ!?」
私の言葉に一松さんはフッと笑う。
「あんた、さっき子供たちにパンの作り方を知らないって言ってたじゃねぇか……幼稚園の先生が嘘つくのかよ……」
「っ!」
「世の中には知りすぎないほうがいいこともあるんだよ……。それも含めての 社 会 科 見 学 です!」
子供たちが一斉に悲鳴を上げる。一松さんが引き金を引こうとした瞬間、私は無我夢中で「待って!」と叫んでいた。
「待って! この子たちはまだ小さいんだから助けて! お願い!」
一松さんが引き金から指を外す。
「へぇ……じゃあ、大人のあんたがこの子たちの身代わりになるってこと……?」
「っ……はい……」
「いいよ……じゃあ、先生は残んなよ……お前らはさっさと行け……」
シャッターが少しだけ上がる。子供が屈んでやっと通れるぐらいの隙間ができた。
「せんせいは?」
不安そうに私の手を掴むトド松くん。