第26章 大人の社会科見学【一松】
「じゃあ、あっちの車庫に移動しようねぇ。あのお兄さんが連れて行ってくれるから付いていってね」
「「「「「はーい!!」」」」」
案内役の従業員に向かって走り出す園児たち。追いかけようとすると、一松さんに強く腕を掴まれた。
「奥田先生、今日はどうでしたかな……?」
「っ……はい! とても勉強になりました。子供たちも積極的に学ぼうとしていましたし、すごくいい経験になったと思います」
「経験……ねぇ……」
一松さんの瞳がキラリと光る。
「あの、何か……?」
一松さんは私の言葉には反応せず、感情の見えない瞳で静かに見つめてきた。
「奥田先生は当然『経験』がおありですよね……? アブノーマルなものにご興味はありますか……?」
「は?」
何を言われたのかよく分からず、私は固まる。
「ヒヒッ、何でもないですよ……さあ、車庫に行きましょうか……」
一松さんは私から離れ、歩き出した。
今の何を聞かれていたの……? アブノーマルがどうとか言ってなかった? だんだん不安になってくる。
距離を取りながら一松さんの後を追うと、子供たちはすでに赤いトラックに群がっていた。
「すごーい! トラックだー! かっこいいー!」
「ぼくも乗りたいー!」
トラックの荷台には、次々と箱詰めされたパンが乗せられていく。
一松さんが園児たちを集めた。
「今から出発するトラックにみんなでバイバイしましょうねぇ」
「「「「「はーい!」」」」」
「奥田先生もご一緒にどうぞ」