第24章 悪魔は甘いキスがきらい【おそ松、トド松】
バイトから戻ると、ヤツは私のベッドの上で寝転がりながら、お菓子を食べていた。
「あっ、おっかえりー! 遅かったじゃん!」
ヘラヘラ笑いながら、起き上がる。口元の牙がキラリと光った。笑い声に合わせて、頭の上の2本の角が揺れる。
「ちょっと! やだ! お菓子の粉がこぼれてるよ? テーブルで食べてよ!」
私は鞄を床に置くと、慌ててシーツの上のお菓子の粉を手でかき集めた。
「え〜、だって、めんどいしぃ!」
ヤツは、背中の黒い羽根をパタパタさせながら、鼻をほじる。先端が矢印のように尖ったしっぽが、ふよんふよんと風もないのに動いた。
「もうっ……毎日毎日部屋でダラダラして……さっさと出ていってくれればいいのに」
「出ていきませーん。てか、出ていけませーん! 契約を終わらせないと無理!」
鼻の下を擦ってニヤニヤ笑う。
「契約なんてした覚えないし! あれはたまたまでしょ? 契約破棄するから帰ってよ!」
私はヤツからお菓子の袋を取り上げた。
「へぇ〜破棄してもいいの? 愛菜の心臓をもらうけど?」
ヤツはニヤリと不気味に笑う。冗談ではなく、本気っぽい。
私はため息をついて座り込んだ。
目の前にいるコイツは、デビルおそ松、通称デビおそ。数日前から私の部屋に住み着いている悪魔だ。
「たまたま本の前で願い事を言っただけで契約になるなんて、悪徳サギでしょ……」
悪魔は首を振る。
「それだけじゃねーだろ? 魂をくれてやるって言っただろ?」
「叶ったら死んでもいいとは言ったけど、そんなの言葉のアヤだから! 本気で言うわけないでしょ!?」