第22章 大統領には押させない!【トド松】
「きゃあああーーーー!!!!」
私の悲鳴にトド松補佐官も飛び上がる。
「何!? はっ!? はああああっ!?」
机の上で愛し合うバカップルな私たち。そのすぐ横で、デカパン大統領が引き出しを開けている。どうやったのか床に転がる壊された南京錠。まさに今、あのボタンを押そうとしているところだった。
「ホエ〜お楽しみ中のところ、失礼するダス! ポチッとダス!」
デカパン大統領が指を伸ばす。
「「だめえぇぇーー!!!!」」
私たちは同時に大統領の腕を掴んだ。
「押させてダス! 君たちはワスに構わず、えっちしてればいいダス! ワスはその間にボタンを押しておくダスから!」
「だめだめだめだめ! 何言ってんだ!」
トド松補佐官が大統領を机から引き剥がす。
「もう夜だから押させてダス!」
「夜でも朝でも関係ないですからねっ!?」
私も大統領の重い体を無理矢理引きずる。
「嫌ダス! あともうちょっとだったのに、諦めたくないダスー!」
暴れる大統領を私たちは二人がかりで組み伏せた。
「あーもう! キリがない! なんなんだよ、この大統領!」
トド松補佐官が不機嫌そうに大声を出す。
「ほんっと、こんな人が大統領なんて冗談じゃないっ!」
クールビューティーはどこへやら、私ももう苛立ちを隠せない。
少し前に花火を見ながら感傷に浸ったことを後悔する。『大統領を支えて、国民の生活を守る』? いやいや、支えようがないでしょ、この大統領。ボタンを守るだけで精一杯。
「愛菜ちゃん……ボク、補佐官辞めたいって言ったけど、撤回する」
無茶苦茶に腕を振り回す大統領に苦戦しながら、トド松補佐官が言う。
「え、撤回?」
「うん、補佐官続ける。だって、ボタンを押させるわけにはいかないもん!」
「そうですね……頑張りましょう……!」
私たちは顔を見合わせ、強く頷く。この戦いはこれからもずっと続くに違いない。
夜の執務室にデカパン大統領の叫びが響き渡った。
「ボタン押させてダスーーーー!!!!」
―END―