第4章 夢松事変【カラ松】
いつものように2階に上がると、賑やかなはずの部屋が今日は静かだった。
「あれ? せっかく遊びに来たのに誰もいないのかあ」
溜息をついて部屋に入り、戸を閉める。
ここは松野家。この家の六つ子たちとは幼馴染で、大人になった今でも度々こうやって遊びに来ている。
「誰か帰ってくるまで待っていようかなあ」
呟きながらふとソファに目をやると、誰かが寝ているのに気がついた。
あれ? 一人いたのか。何松だろ? そっと覗き込んでみるけど分からない。なにせ六つ子はみんな同じ顔をしている。
その時、ソファにかけられた服が目に入った。
ん? これは……カラ松の服?
見慣れた革ジャンと細身のデニムパンツ、骸骨のバックルが付いたベルト、おまけにサングラスまで近くに置いてある。どうやら、寝ているのはカラ松で間違いなさそう。
相変わらずイッタい格好だなぁ。そう思いつつも、私はなぜか服の前に座り込んでいた。
……ゴクリ。喉が鳴る。
着てみたらどんな感じなのか興味あるかも。ちょっと着てみようかな。いや、別にこのファッションが好きってわけじゃないからね? ちょっと気になってるだけだからね!?
部屋から出て階段の下を覗き込む。うん、誰も来ない。部屋に戻ってカラ松を確認する。よし、寝てる。
私は、高鳴る胸の鼓動を抑えながら、そっと服に手をかけた――。