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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第17章 片道タクシー【カラ松】


慌てて家から外に飛び出したその日は、たしか雨が降っていたと思う。1月も後半に入り、暖かい日もちらほら出てきたものの、特に冷え込みのきつい夜だった。


真っ暗な中、冷たい雨に打たれながら、たまたま通りがかったタクシーを止める。


「赤塚記念病院に行ってもらえますか? 急いでるんです!」


勢いよく乗り込むと、返事はなく、車内に響くハザード音。ワイパーが軋みながら上下する。


「あの……?」
不審に思いながら運転手を見ると、彼はようやく重い口を開いた。


「お客さん……」
低音のよく響く声。


ゆっ……くりと振り返る。


「赤 塚 記 念 病 院 ですね……?」


見ると、運転手は夜にもかかわらず、サングラスをかけていた。表情は分からないが、にやりと口角を上げている。


「そうです! 早く行ってもらえますか? 大通りから一本入った細い道でややこしいと思うんですけど、わかります?」


「ええ、わかりますよ。なにせ……


タ ク シ ー ド ラ イ バ ー


なんでね……」


ああ、もう! ただでさえ、焦ってるのに! イライラすれども、車はなかなか発進しない。


「もしナビに入れるなら、病院の住所のメモありますけど」
私が鞄からメモを取り出すと、運転手は呆れたとでも言わんばかりに首を振った。


「いえ、ナビは使いません。こいつを使ったら……


負     け


なんでね……」


「だったら、早く行ってください!」


バックミラー越しに運転手が不敵に笑うのが見えた。


「イグニッション……」


車は暗い夜道を滑るように走り出した。


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