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妖狐の籠

第3章 化猫


黒くて大きな羽の…

いた…!


「右烏いたにゃ…」


「猫都…!?
何があった!?
全身傷だらけで血が出てっ…!?」


ふらふらとした足取りで

ふとしたら意識を失ってしまいそうで

でも、右烏を見て安心した…


体が前に倒れる前に

右烏が受け止めてくれる


「猫都!何があった!
誰かにやられたのか!」


「違うのにゃ…
この傷は全部結界を通った時にゃ…」


右烏は大きく目を見張る


「うにゃ… 痛いにゃ〜!!!!!!」


縋るような思いで

泣き叫びながら右烏に抱きつく

痛い

痛い

身体の隅々まで悲鳴をあげている


「猫都……」


右烏はずっと慰めてくれる

本来なら右烏は

私を突き飛ばしてもおかしくない

私は理性を失いかけて

力の限り抱きしめているから

『化猫』特有の鋭い爪が

右烏の背中にめり込んでいるだろう

相当痛いはずだ

だって時折、右烏は顔をしかめるから



それでも、ずっと慰めてくれる





数少ない友…






「結界のせいだと言ったな猫都
いつから結界の歪みが
酷くなっていた?」


焦ってるような右烏の声


「狐珀が… 狐珀が…
あの少女に接吻してにゃ…」


〝接吻〟という言葉を聞いて

右烏の顔色が変わる


「まさか… 狐珀が…
『人』と接吻したのか…?」


「そうなのにゃ…
私が見てたにゃ…
少女を魔力で眠らせた後にゃ…」


「狐珀のせいで、猫都が…」


先程まで焦っていた声が

今度は怒りを含むような声だ



「狐珀… ただじゃおかない
大切な友を傷つけてまで
お前は則を無視し続けるのか…」


右烏の目つきは元々悪いけど

こんな間近で睨んでいる顔をみると

いつもの目つきの悪い顔が

優しい顔に思えてくる
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