第2章 始まりの音
「バイトが入ったみたいで・・・今日のデートは中止になりました」
「マジか・・・あー・・・」
それは何とまぁと思う。
事情は仕方ないとは言え、あんなに楽しみにしていた彼女の事を知っているだろう彼氏は相当へこんでるだろう。
目の前の彼女の落ち込みっぷりは中々である。
「本当はどうしようか迷ったんですけど」
「ん」
「なんか祭が勿体無い気がして」
「・・・・・アハハハハハハッ!」
「えっ!?ええ!?」
やっぱりこの子可愛いと心から思った。
デートは残念だけど、だけど祭は祭で行きたいって所なんだろうけど、今時の子供でもここまで素直ではないと思う。
それが可笑しくて暫く笑い続けた。
「たくっ、お兄さんは昨日から笑いすぎですよ」
「ごっごめッ」
「もぉ・・・それより、お兄さんは?彼女さんとか平気なんですか?」
「ククッ・・・え?なに?」
「彼女さん!平気なんですか?って聞いたんです」
「ああ、いないいない、俺は一人で来てる」
「・・・・・寂しい人ですね」
「ぶはっ!!」
「もおおお!何なんですか!!?」
たった今、自分も一人で来たみたいな事を言っておいてそれを言えるこの子、本当に凄いと思う。
何となくメンバーの誰かを連想させて、二人が話たら凄い事になりそうだとか思うと余計に面白かった。
「ハァハァ、ちょっ無理、俺そんなッ・・・腹筋強くなッククッ」
「知らないですよ、まったく」
「ハァハァ・・・しんど」
「落ち着きました?」
「ッ落ち着きました」
りんご飴を買って他にも幾つか適当に食い物を買って帰るつもりだった。
人混みは苦手だしこの場にずっといる気にはなれなかった。なのに。
「んじゃあ、一緒に回る?」
「え?」
自分でも無意識にそんな言葉を口にしていた。
言われた女の子も言った自分も、たぶん同じように驚いた顔をしていたに違いない。
何とも言えない沈黙。
「・・・・そんなに寂しいんですか?」
「ぶっ」
「あの」
「ごめんごめん、そうそう、寂しいッ・・ですッ」
「嘘くさいです」
じとっと見られて溜息をつかれる。
だけど、すぐにまた笑っていいですよと言われた。
それから本当に久しぶりに祭を堪能した。
何となく子供時代に戻ったような感覚。