第2章 始まりの音
『明日が本番で、その、彼氏と来るんです』
不意に思い出すのはそう言って幸せそうに笑っていたあの子の顔だった。
見てるこっちまでその幸せに当てられる位、頬を染め嬉しそうに笑っていた。
今頃その彼氏と楽しくやっているんだろうなぁなんて思っていた時だった。
「あのっ!その小さいヤツと大きいヤツを1つずつ下さい」
「!?」
それはまさかの出来事だった。
この祭は二日間に渡って行われる祭で地元でもかなり有名で大きな祭だと言う。
年々参加する人は増え、今年は特に自分達のコンサートとかぶって更に人数が増えたとか誰かが言っていた気がする。
そんな何千といる人間の中、名前すら知らない一度しか会った事の無い人間と再び会うなんて事があるのだろうか?
ゆっくり振り返ればそこにいたのは昨日とは違うピンクの桜の模様の浴衣を着たあのおもちゃ箱のような女の子がいた。
(マジで?)
見た自分でも信じられない光景。
だけど、夢でも幻でもなく彼女はそこにいた。
自然動く足。
「すみません、大きいヤツもう1つ追加で。支払いは一緒でいいんで」
「!!!???」
突然言われた言葉に女の子は心底驚いたようにこちらを振り返った。
大きな目でこちらを凝視する。
「えっ?あれ?ああ!昨日のお腹の人!」
「そんな覚え方!?」
滅多にしない突っ込みが出来る程、よりにもよってそんな覚え方をされていたのかと思わず苦笑する。
購入したりんご飴を渡せば慌てたように巾着から財布を出そうとするので昨日のお返しだと言えば1つ分多いですよなんて言う。
「それがお礼って事で」
「なんと!?うーん、ならば喜んで受け取ります」
「アハハハッ、うん、そうして」
一々反応が可愛い。
こんな子が彼女ならその彼氏も幸せだろうなぁと少し羨ましく思う。
鈍感だなんだとよく言われる自分でもわかる。
全身でその気持ちを表現する女の子。
『大好きなんです』
そう彼氏の事を言った顔はとても印象的だった。
軽い小話程度の話。
だけど、こんなに鮮明に覚えている。
「あ、彼氏いいの?」
「えっ?・・・・」
「ん?どうした?」
昨日はおんなに幸せそうな顔をしたのに、今はそれを言っただけで表情が暗くなる。