戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第55章 移りゆくとき ―明石の上&謙信源氏―<R18>
政治的なことで、この明石に光る君が滞在なさることになった、と父から聞いた。
母君は身分が低いものの大層帝に愛されたかたで、光る君ご自身も美貌の持ち主で更に数々の才能に溢れたかただと、こんな田舎にもお噂は流れてくる。
そんな華々しい、明石とは無縁なはずのかたが田舎者の私と縁を結び、娘を授かった。
光る君の唯一の娘。
光る君が大変愛していらっしゃるという紫の上様へ養女に出し、高貴の娘として育てていただき将来入内するという事が生まれながらに決まっていて、私は泣く泣く娘の幸せの為彼女を手放した。
「ようやく会えた」
光る君がいらしたのは、父が用意してくれた私と母の住む大堰の別邸。
六条院が出来上がって、私を迎えてくださるというお話しに、明石の田舎に育った者がいきなり都で暮らす事に不安があって、まずこちらに落ち着いた。
紫の上様に気がねしながら、そして紫の上様も私の娘を養女にしてくださったご配慮から、今回のお越しが出来たと言えよう。
「…やはりおまえは美しいな…」
光る君様こと謙信様はそうおっしゃって私の頬に触れる。
「会いたかった…」
謙信様は私に近寄り抱き締められる。
「私も…です…」
謙信様の久し振りの体温は全身を包まれるぬくもりのように心を安らげてくれるけれど、それより謙信様の少し冷たく薄い唇が、私の唇と合わさる時に私の体温がいっきに上がるのを感じる。