戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第42章 戦国源氏のくりすます ―安土城戦国源氏―
戦国源氏のくりすます(おまけ2) ―家康蔵人―
「お待ちくださいませー家康様―」
ばたばたばたばた、と女官や女房達がずるずると十二単を引きずって、俺を追い掛けてくる。
俺は急いで目の前の御簾をめくり、その中に入り、隅に移動して動かないようにする。
「いーえーやーすーさーまーぁぁぁ」
女官や女房のかしましい叫び声が、いくつも御所内に響き渡る。
事の発端は、俺がさんたとやらの衣装を着た事だ。
御匣殿に言われ、胸元を大胆に開けた衣装にしたところ、視線が突き刺さっているのは気付いていたが、宴終了後、追い掛けられるとは思いもよらなかった。
「あの胸板素敵だわぁぁぁ!」
「絶対に触らせていただきましょう!」
「私はいっその事、お持ち帰りを…」
「あら、貴女独り占めはずるいわ、みんなで堪能しましょう」
おい、勝手にみなで俺を堪能するな。
そんな女達から逃げて、隠れて、やりすごすところだ。
こんな事なら、政宗さんに譲れば良かった。
政宗さんなら喜んでおんな達に触らせ、ついでに全員持ち帰り出来るんじゃないだろうか。
それにしても、胸元が寒い。
「…くしゅ」
しまった。
「ちょっと!ここからくしゃみが聞こえたわ!!」
まずい、目の前に誰かいたらしい。
見つかったらおしまいだ。
誰かが御簾をめくろうとし、俺は万事休すとなる。
そこへ。
「あちらから男のかたの声が!」
柔らかい声が、女達を他の方向へ促す発言をした。
「え?本当?家康さまーっ」
おんな達は指示された方向へばたばたと走って行った。
ほっとしたのもつかの間、御簾が引き上げられ、女が一人顔を覗かせた。
「はい、これ頭からかぶって、すぐ去ってください。おねえさまがた、きっとすぐ戻ってきますから」
紫の単衣を渡された。
「…ありがとう」
よくわからないまま、単衣を受け取り頭からかぶり、急いで戻る。
戻れば牛車が待ってるから、それに乗ってしまえば帰れるから。
ちらりと助けてくれたおんなの顔を見るが、暗くてよくわからなかった。
しかし声は覚えている。
次にこの声の持ち主にあったら、俺は、恋をするかもしれないか?
<終>
H29/12/25