戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第42章 戦国源氏のくりすます ―安土城戦国源氏―
戦国源氏のくりすます(おまけ1) ―光秀中将&秀吉少将―
「秀吉」
艶やかな低い声で呼びかけられて振り向くと、光秀中将が立っていた。
「どうした?光秀」
光秀は扇をぱらりと開き、女人が見惚れる笑みを浮かべ、秀吉に近づく。
「いや、何…おまえを労わってやろうと思ってな」
「俺を労わる?いや、光秀に労わってもらう必要は無いぞ」
その瞬間。
かたん、と光秀の扇が落ち、秀吉の両腕は光秀の両手によって抑え込まれ、そのまま秀吉の背中は壁に張り付く事になった。
「あ、おい、光秀、何考えてるんだ、離せ」
「この間の続きをするとしようか」
「俺は男とは嫌だ」
光秀の提案に即座に断りを入れる秀吉。
「俺はこれからも闇を歩く。おまえは光の中を歩いて、俺を踏み台にしていけ」
光秀の言と共に、瞳がぎらりと揺らめき、その揺らぎの中に秀吉が映り込む。
「光秀…おまえ…」
また唇が触れ、光秀はそれだけで秀吉の腕を開放し、扇を拾うと秀吉から離れていった。
「あ、おい、待てよ、光秀!」
秀吉は追い掛け、光秀の肩を捕まえる。
「おまえ、どういう事だ、闇を歩くって…」
光秀は捕まれた肩に置かれた手をそっと外し、扇をぱらりと開いて言った。
「そのままだ。俺は闇を歩いて、不穏な輩を始末していく。おまえは帝を守って、光の中を、俺を踏み台にして行け」
「何故、光秀、おまえを踏み台にしなければならない!?」
秀吉の怒りを含んだ声に、光秀は言う。
「簡単だ。俺がそう決めたからだ」
「…光秀」
光秀はそれだけ言うと、向きを変え、そのまま去って行った。
「くそっ!俺は何が出来るんだ!」
秀吉は光秀の潔い姿に何も出来ず、ただ茫然と見送るだけだった。
<終>
H29/12/25