第42章 戦国源氏のくりすます　―安土城戦国源氏―

「くり、す、ます、でございますか？」

秀吉少将は怪訝な顔をして信長帝を見る。

見る、と言っても帝は御簾の奥にいらっしゃるから、直接のお顔を拝見する事は出来ない。

帝はおっしゃった。

「そうだ。秀吉、今年はくりすますをするから支度をせよ」

「しかし…それはどういったものか…文献から調べなくては…」

その秀吉の消極的な回答に、帝はさらりと言う。

「三成蔵人（くろうど）に聞け。あやつがこの事を知っており、俺に進言してきたのだ」

「三成でございますか？何故直接帝にそのような事を…」

「違う。俺が舞中宮や女御達を楽しませる催しは無いか、と三成に聞いたのだ。するとあやつが異国の催しに、くりすますとやらが有ると申してきたのだ」

「さようでござりましたか。では三成に問うて支度を致しまする」

「舞中宮や女御達を楽しませたい。任せたぞ、秀吉」

信長帝にはあまたの女人が入内されているが、一番愛されているのは舞中宮で、ほぼ毎夜お呼びになる程のご寵愛だ。

勿論中宮のお顔を拝見出来るのは、信長帝お一人だが、女官に言わせると大層美しく愛らしく、花に例えると撫子が可憐に咲く姿を思わせるそうだ。

それだけ見目麗しいところに、お優しくもあり、女官達も皆、舞中宮にお仕え出来て喜ばしく思っている、と漏れ聞こえている。

秀吉は早速蔵人である三成の許へ赴く。