戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第33章 八ノ宮中君の巻―家康ノ宮と三成ノ君-<R18>
おねえさまに言われても、何だか夢のようなお話しなの。
家康様はここのところ、私のところにはお越しになっていらっしゃらないので、私の具合の悪さは伝えてはいなかったの。
でも三成様から聞いたようで、牛車ではなく馬で邸へ来てくださった。
「聞いたよ、舞」
御簾をからげながら息を切らせ、性急に私を抱き締め口を開く家康様。
「俺の子を懐妊したんだって三成から聞いたよ。ここのところ具合も良くなかったって言うのも聞いたけれど、祈祷はさせてるの?」
「…いえ…特には…」
「駄目だ、すぐ祈祷を用意させる」
私を一度離されると家康様は立ち上がり、側で控える随身(ずいじん)に祈祷の準備を申し付ける。
「懐妊が原因でおじいさまは、葵の上様を亡くされてるんだ。右大臣様を出産されたもののからだが弱っているところに物の怪がついて、だいぶ良くなられていたのにおじいさまが出仕なさった時に亡くなってしまい、おじいさまはとても悲しまれたと聞いてるよ。だから懐妊時につく物の怪には、くれぐれも気を付けないと駄目だ」
家康様のおじいさまと言えば、あの輝くばかりにお美しかったという光る君様の事ね。
葵の上様は光る君様の最初のご正室で、早くにお亡くなりになったのは知っていたけれど、懐妊と出産が原因でお亡くなりになっていたのは知らなかったわ。
家康様はそうして邸の一室に、祈祷のしつらえを用意してくださり、出産が済むまで私とお子の為に祈られる事となる。
やがて産み月を迎え、白一色の中私は苦しみつつも若君を出産し、家康様は勿論中宮様も喜んでくださったと後で聞いたの。