戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第29章 紫の巻―義元中将-<R18>
「さぁ…何の事でしょう…?」
「とにかく行ってくるよ。舞、戻ったら貴女が一番だとわからせてあげるからね」
「いってらっしゃいませ」
義元中将へしとやかに挨拶をする舞に、色気を含んだ笑みを見せ、義元中将は女三ノ宮が待つ春の町の寝殿へ向かった。
「…全く舞様は本当にお人がよろしい事で」
女房がほう、とため息をつきながらまた同じ事を唱える。
「女三ノ宮様側が何を申されてもよろしいではございませんか。義元様が一番愛していらっしゃる女人は舞様なのですから、堂々とあちらへお越しにならないよう、おくちに出してよろしいのですよ?」
「…嫌だわ、そんな事。それに女三ノ宮様の父帝である朱雀院様からも、私にわざわざ丁重な文をいただいているのですよ?そんな大切な姫宮様に、失礼な事は出来ませんし、姫宮様を妹のように相手をさせていただきたく思っているのですから、今後、そういう事は言わないでくださいね」
不満そうな女房へ釘を刺し、舞は数日前に朱雀院から届いた文を思い出した。
『みっともないと思われるのでしょうけれど、姫宮が大切で弟の光の君に託す事にした事を、さぞお恨みに思われているでしょう。ですけれど、ここは父親としてのうつけた心を感じいただいて、姫宮をよろしくお願いします』
そんな事が書かれた文を見て、大切にされた姫宮様を不躾な扱いに出来る訳がない、と舞は朱雀院の女房に宛て、姫宮様は義元中将ともども、娘のように大切にさせていただきます、と返事を認めた(したためた)のだった。
そして三日間、義元中将は女三ノ宮へ通い、所顕し(ところあらわし)も済ませ、高貴さを盾に女三ノ宮は正室として威厳を発するが、本人はあくまでおっとりと何もわからず、人形好きの娘と言って変わらないまま、今迄と同じように過ごしていた。