第1章 1
僕がうなだれて返事をすると、
「・・・無理、しないでくださいね」
「え?」
「私達ファンは、youさん達に体を壊してまで曲を届けて欲しくないです・・・」
「・・・・・・・・・」
「だから、今日は休んでくださいね」
泣きそうだけど、静かで丁寧な言葉だった。
一つ一つの言葉が心に染み込んで、暖かくなった。
「・・・へ、変なこと言ってごめんなさい!失礼しました!おやすみなさいっ!!」
「あ!!ちょっ・・・」
早口で僕に謝った彼女は、僕が止める間もなく素早く電話を切った。
ツー、ツー、という音が漏れてくるケータイを切り、僕は夜空を見上げる。
空には、大きな月が浮かんでいた。
僕は大きな月を見ながら、yasuにもらった飴を口に入れて、屋上の扉へと歩き出す。
「・・・・・・この飴・・・ハッカやん・・・」
甘い味を期待していた僕は、口の中に広がった爽快さに顔をしかめて、扉を閉めた。