第1章 1
「あ゛ーも゛ー!無理っ!」
僕は額に当てていた左手でテーブルを叩き、叫んだ。
僕の声と、テーブルの上のティーカップがガシャンッと跳ねた音に、テーブルの向こう、音響機器の前で笑いながら雑談をしていたメンバーが振り向く。
「おー、どうしたー津田ぁー?」
「・・・あかん、出来ひんわ・・・」
そう言って僕は頭を抱える。
それがとても深刻そうに聞こえたのか、yasuが心配そうにイスから立ち上がり、僕が向かっているテーブルにやってきた。
「大丈夫か」
「全っ然、思い浮かばへんのやけど」
僕の前には真っ白な五線紙。
紙を前にして、かれこれ3時間は経っていたと思う。
「・・・“カオスモード”、突入やぁ・・・」
「まぁ、あかん時はムリせぇへんように、程々にしとき」
yasuはポケットから飴を取り出し、僕に投げてからイスに戻っていった。
もらった飴を手でいじりながらしばらくぼーっとして、僕は立ち上がった。
「you、どこ行くん?」
「ちょっと屋上行ってくる」