第12章 霜月と…。
『私…月原流那。』
「流那…僕の可愛いお嫁さん。」
少しだけ頬を紅く染めて私は俯いた。
「流那、遊ぼうか?」
『ん…。』
「流那はなにするのが好き?」
『ピアノとか…お歌歌うのとか…。』
それを聞いた隼はなにか思い付いたかのように私の手を取る。
「それを聞いたら僕は流那のピアノが聞きたくなった。
聞かせてくれるかい?」
『え、う…んと…。』
「ダメかい?」
ペリドット色の綺麗な瞳が私の目をじっと見つめている。
なんだか恥ずかしくなって目をそらした。
「流那…?」
『ちょっとだけ…なら。』
そう告げると隼は嬉しそうに微笑み私の手を引いた。
連れていかれたのは家にあるのと変わらないグランドピアノがある部屋。
「聞かせて?」
『う、うん…。』
少し高い椅子を榊さんに直してもらう。
「流那、楽譜は?」
『……要らない。』
私は暗記型だった。
1度か2度弾いたら大体は覚えてしまう。
だから好きなこの曲もすぐに弾けた。
「ほう…?
ルートヴィヒ・ ヴァン・ヴェートーベンの
ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13『大ソナタ悲愴』
か…。」
この人はなんなんだろう…こんな難しい曲をフルネームで覚えてるなんて。
私は英才教育は受けていないけど母がよく流しているレコードを聞いていて名前を覚えた。
「すごいねぇ、こんなにも繊細に、だけど躍動感のある悲愴は初めて聴いたよ。」
聴きながら感想言うって…この人私のピアノをちゃんと聴く気あるのかな…?
そんなこと考えながらも曲は第二楽章に入りあの有名なフレーズに。
ここが好き、優しいのにどこか悲しくて温かくて…ここを弾いてるだけでもなんだかとても涙が出てくる。
【誰かを思い出すような】
『っ!!』
手が止まってしまった。
(※ヴェートーベンの悲愴を知らないかたは第二楽章だけでも聞いてみるといいですよ!動画サイトに落ちてるので気になったら聞いてみてください。)