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ツキノヒメ。

第9章 歌詠鳥が啼く頃に。(春ルート)



「ルナ、起きて?」


優しい声が聞こえた。


好きな声。


目が覚めると春が優しく頭を撫でてくれていて、すごく嬉しかった。


それにしても、ずいぶん長いこと眠ったような感覚だった。


このあと、お母さんが迎えに来てくれた。


しかし私は、春と別れる際でなぜかもう会えないような気がして泣いてしまう。


「どうしたの?」


『わからない…。』


ただとめどなく涙が溢れて春と離れたくないと思った。


「また会えるよ?だから泣かないで?」


春が優しく頭を撫でてくれる。


お母さんも待ってるし帰らないと…なのに、何でこんなにも不安になるんだろうか。


結局春と別れて家路に向かってお母さんと手を繋いで帰っていた。


途中でお母さんが知り合いの人とあったみたいで私は近くのベンチに座って話が終わるのを待っていた。


そのすぐあとだった。


近くの茂みがガサガサと物音を立て始める。


少しビックリしてその様子を伺っていると、そこから現れたのは小さな真っ黒な子兎。


『わぁ、可愛い!!』


子兎はすごく人懐っこくて私の隣に来ると嬉しそうに私に撫でられていた。


お母さんが話し終わらないので暫く子兎と遊んでいると、突然聞き慣れた男性の声が。


『お父さん!!』


仕事帰りだったのかお父さんが居て私に手を振っている。


嬉しくてニコニコとしていると突然子兎が何処かへと走っていく。


『あ、兎さん!!』


慌てて追いかける。


すると子兎は道路へと歩いていってしまう。


慌てて追いかけるが突然、信号無視をした車が走ってくる。


それに気がついた私が、


『危ない!!』


と咄嗟に飛び出して子兎を抱き上げる。


刹那、自分のからだが宙に浮く。


落ちた先は植木の上だった。


お父さんが血相を変えて私を抱きかかえる。


(お、とうさん…。)


「流那!しっかりして!流那!!」


お父さんが私の名前を叫んでる。


その事故により、命に別状はなかったが、頭部をぶつけた影響により一部の記憶を喪失、右腕骨折した。


だから忘れてしまっていたの。





弥生春-初恋の人-のことを。


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