第1章 偉大な海賊
「ん・・・」
「やっと起きたの?変態船長」
ジャックの顔を出来る限り冷ややかな視線で見下ろす。
だってそうでもしないと・・・昨夜のあれこれを思い出すだけで顔が爆発しそうだ。
「・・・?お前なんで俺の部屋に・・」
「はぁ!?忘れたとは言わせないわよこのド変態ッ」
「ちょっと待て今思い出す!」
ジャックは私の拳を手で制止してうーんうーんと唸り、はっと顔を上げた。
「・・・思い出した?この変態」
「あぁ、ぜーんぶ思い出した。あとさっきから語尾に変態って付けるのやめてもらっていーい?」
いつもの掴み所がない笑みだ。
「嫌よ!だって私は・・・っ」
「いや、君が初めてだったなんて知らなかった!俺もすごくびっくりした!」
「だから何よ!知ってたら手出さなかったっていうの!?」
「いや、出したな。ビックリしただけ」
「なっ・・・」
その言葉が少し嬉しかったり。
その笑顔が少し昨日までとは違って見えたり。
今日の私、やっぱりおかしい・・・。
「ちゃんと責任、とりなさいよ・・・」
「えっ、嘘だろ!?中には出してないはず・・・」
「違うわっ!!」
思わず怒鳴ってしまった。
顔、赤くなってないだろうか・・・。
「は、話の続き。聞かせてよね、ヘクターと戦うところから」
ジャックはそれを聞いてにやりと笑った。
やっぱり、この男は本当に掴み所がない。
「お嬢ちゃん、キレイなままでいたいならさっさと寝ろよ。忠告はしたからな」
ジャックはそう言って船室の扉を開けた。
太陽の光が眩しい。
「後悔、してないからねっ」
今朝目が覚めたときからずっと言おうと思っていたその言葉が、まるで負け惜しみの捨て台詞のように聞こえた。
「そりゃよかった」
振り向かずにそう言った偉大な海賊の後ろ姿は、朝日を浴びて輝いていた。