第26章 相談
「あいつは興味のあるものしか目に入らない。
食事も放っておくと、干し飯だけ口に入れて、とりあえず何か腹に入れておけば良いって性分だ。
寝るのも放っておくと、三日くらい寝ずに本を読んでいる。
生活においては破綻してると言って良い」
舞は呆然とする。
『三成くんて、そんなに生活ひどかったの…』
政宗が続いて話す。
「俺と市を歩いてる時だったな。
すぐ横で転んで足を痛めた町娘がいたんだが、三成は見事に気付かなかった。
後で聞いたら、新しい本が入っていると連絡のあった、書物問屋に行きたくてしかたなかったらしい」
「そ、その、足を痛めた町娘さんはどうしたの?」
そんなに気が付かないんだ、と驚きながら舞は続きを聞く。
「俺がいたからな。
俺が簡単に手当てして、おんぶして住まいまで送ってやったんだ。
三成は俺の斜め後ろを歩いていたが、どうして町娘を手当しておんぶして、住まいまで運んでいるのか、俺が教えるまで理由がわからなかった、と言ってたな」
「それは…かなり、すごい、ね…」
舞は思った以上の三成のアンバランスさに驚く。
「それだけ周りを見ていない三成が、井戸で水汲みを手伝ったって聞いたらどう思う?
頼まれたんじゃなく、自ら手伝ったと聞いたぞ」
「それは、やっぱり、葉月さんに何か気になるところがあるのかなって思う、かも」