第171章 ほんとうのこと
「何を言っている。おまえはここの家の者だ。成もこの家の者だ。戦国なんぞ戻るのは許さん。絶対二人共どこか行くのは駄目だ」
父の大声に成が驚いてまた泣き出す。
「ほげぇぇぇぇぇ」
「ああ、ごめん、また驚かせちゃった」
よしよし、と成を揺するとほげほげとぐずりながら、しっかりと葉月の腕に抱き着いている成の姿を弥生は目にする。
「おとうさん、おかあさん、成を見て。やっぱり母親が一番なんだよ。成の手、しっかり葉月の腕をつかんでいるでしょ。二人を離しちゃ駄目だし、今迄二人の言う事をきちんと聞いてきた葉月が初めて大きく反抗しているくらい、自分の考えを貫きたいって思っているんだよ。だから、戻らせてあげて。お願いします」
弥生が葉月の援護をするが両親は頷かない。
「駄目だ。絶対許さない。二人は行かせない」
「おとうさん、おかあさん、お願いだってば」
葉月は必死に頼む。
「嫌ですよ、成ちゃんが私達の前から居なくなるなんて」
「堂々巡りだ…これ以上話しても無駄だね。夜も遅いから一度この話しは引っ込めて休もう。でも私は葉月の望みを叶えたいと思っているから、絶対二か月後に戦国に戻すからね」
弥生は立ち上がり、葉月にも部屋に戻るよう促す。
「その頃になったら、葉月と成は外に出させないぞ」
父親も弥生を睨みつける。