第171章 ほんとうのこと
「ちょっと、葉月、もう父親の事はどうでも良いわよ、ここにずっと居てくれるんでしょ」
「成と一緒で頭打って、おかしな事を言うようになってしまったのか?」
父親も呆れて言い、弥生が口を開く。
「葉月の言う事は本当だよ。私が戦国時代へ戻れる路を計算して見付けた」
弥生の硬い表情に、ようやく両親は訝しむ。
「どういう事…戦国時代ってだって500年くらい前の時代でしょう?」
「それに石田三成って言ったら、関ケ原の戦いで徳川に敗れて、晒し首になった奴だぞ。冗談もほどほどにしてくれ」
「…本当だよ。私が行った戦国時代は、おとうさん達の知る戦国時代と少し違うの。本能寺の変が起きた後だったけど、織田信長は生きてるし、上杉謙信も武田信玄も死んでないの。それに明智光秀もおじいさんじゃなくて若いし、とにかくみんなすごいイケメンなの」
「歴史が違うとでも言うのか?」
「うん、そう。とにかく習った歴史と違う戦国時代に飛んでしまって、織田信長は生きてるから関ケ原は起きないし、石田三成も徳川家康の敵にはならないよ」
葉月はまくしたてる。
「じゃあ、葉月が行方不明になっていた間って戦国時代に行っていたとでも言うの?」
母の言に頷く。
「そう、だから、戻ってきた時着物を着ていたでしょう?」
「それはそうだけど…やっぱり葉月はどこか頭を打ったのかしらねえ、おとうさん?」
信じられないと言った体の母は同意を父に求め、父もそうだと言わんばかりに頷いた。