第117章 姉、弥生
「どこの誰か言えないようなおとこのこども、許す訳ないだろう!」
葉月の父親が病室へ来て、怒鳴った。
「じゃあ、退院したら家を出て行くから、もう私の事は放っておいて」
葉月も言い返す。
やはり母親が思った通り、二人の会話は平行線で全く噛みあわずにいる。
お互いが自分の考えを主張し、譲らない。
「いますぐ堕胎の手術をしろ!」
「絶対しない!絶対産むの!おとうさん帰って!もう来ないで!」
さすがに隣室の舞も、下手に自分が介入すると余計にこじれるのがわかっているせいか、葉月のところに行かれない。
「もう、いい加減にしなよ、すっごい二人共うるさいよ」
ドアを開けて入ってきたのは、葉月の姉、弥生だった。
「弥生おねえちゃん…」
葉月はベッドに座ったまま、入ってきた弥生の顔を見た。
「廊下に二人の声が響き渡っていて、恥ずかしいから止めなよね?」
流石に他の人に聞かれていたのかと、二人は口を閉じる。
「おとうさん、とりあえず帰って。そろそろお店の時間も有るでしょう?
私が葉月と話しをするから」
ね、と弥生に諫められ、店の時間もある事から、父親は帰る事とする。