第15章 羊羹の依頼
「そうだ、おまえ、あんずが中に入った羊羹を数日前に作ったか?」
秀吉が急に話題を変えた。
「ああ、あの羊羹ですね。はい、私が作りました」
すると、秀吉は笑顔を見せて続ける。
その笑顔に驚く葉月。
『うわぁ、なんて優しい笑顔!』
「あれはなかなか美味かった。
御館様にも召し上がっていただきから、また作ってくれないか」
「お気に召してくださって良かったです。
いつお持ちしますか?」
この時代の人が、果物入り羊羹を気に入ってくれるとは思わなかったが、笑顔を見せる秀吉に、こんな陽だまりのような笑顔を見せてくれるならいつでも作ろう、と思う。
「そうだな…早速で悪いが明日、出来るか?」
「あ、明日ですか?」
「難しいか?」
「わかりました。何とか明日中にお作りします。」