第112章 戻った時代
規則正しい電子音が聞こえる。
「…う…」
軽く唸って葉月はゆっくり目を開けた。
見覚えのない白い天井。
「…ここ、は…」
顔を左へ向けると、点滴のついた左腕が目に入った。
右を見ると機械が置いてあり、なにやら数字が表示され、ライトが点滅していた。
「もしかして、病院?」
そう葉月が思った時、部屋のドアが開いて誰かが入ってくるのがわかった。
「…誰?」
恐る恐る葉月が声を掛けると、入ってきた人物が急いでベッドに近寄るのがわかった。
「葉月、貴女、起きたのね…!」
「…おかあ、さ、ん?」
葉月は自分のおかれた状況が全くわからない。
剣道の段審査に行く途中で事故にでも遭ったのかな?
待って。
何か大切な長い長い夢。
そう、愛した人がいる。