第97章 聞いてはダメ
「よくあの女中を説得出来ましたね」
葉月の両手を握って、三成が言う。
葉月は三成の顔を見ながら、両手を握られたまま言った。
「説得するつもりは無いのですけれど…けれどあの態度は良くないと思って…」
「あの女中は仕事はよく出来るのですが、人への接しかたがうまくなくて、かと言って私がどうこう言う立場ではないので、対応に困っているところがあったのです」
「三成様も対応にお困りだったのですか…」
「でも、二人で仕舞いには笑ってましたね」
「嫌だ…どこまで聞いてたのですか?」
三成の言葉に、自分が月代に話していた事をどこまで聞かれていたのかと、恥ずかしくなる葉月。
「人を説得する程、私、人間が出来ていませんから、恥ずかしいです…」
「そんな事ないですよ。あの女中と…」
そこで区切って三成は笑みを浮かべる。
「私の取り合いをすると言ってましたね」
「…もう、なんで聞いているんですか、駄目ですよ」
葉月はそう言って、片手を外し、三成の鼻をきゅっとつまんだ。
「あっ、痛っ。何をするんですか」
三成は反撃とばかりに葉月をぎゅっと抱き締め、顔のあちこちに口付けを落とす。
「…んぁ…みつ、なり、さま…」
「反撃、ですよ。で、葉月さんはどうやって私を取られないようにするのですか?」
口付けを止め、少し顔を離していたずらっぽい表情で、三成は葉月の顔を見る。
「えっ…何で、それまで…」
「実は全部聞いてしまいました」
「もう…三成様ったら…それ、だめ…」
苦笑いをしながら葉月は、三成の口付けを受け止める。
「ん…女の子の会話、聞いちゃだめ…です…」
注意しながらも、女中が湯浴みの支度が出来た事を伝えるまで、二人は抱き合って口付けしあっていた。