第43章 ふたりのおとこ
「…葉月さん?」
少し離れたところから、葉月を呼ぶ声がした。
「…三成、様…」
町娘達に連れて行かれた三成が、一人で現れた。
「さっきの人達は…?」
葉月が聞くと三成は苦笑して言う。
「ええ、連れて行かれてしまいましたが、ちゃんと事情を話して放してもらいました。
でも先程の場所に戻ったら葉月さんはいらっしゃらなくて探しましたよ。
…そのかたは?」
すぐ側に富弥がおり、確かこの男は、茶屋で葉月をじっと見つめていた者か、と三成は気付く。
「富弥さん。よくお店に羊羹を食べにきてくださるかたなんです。
さっき一人になっていたら、一緒に回ろうって声を掛けてくださったの」
富弥も笑顔を作って、三成に挨拶するが、その内容は毒を含んでいた。
「石田様、こんな綺麗な娘を一人にさせるなんて、ずいぶん危険でいい加減ですね。
だから、俺が一緒に回って、送っていくつもりだったんですよ」
「…そうですか、それはご迷惑お掛けしました」
三成は謝って、葉月の側へ寄る。
「葉月さん、一人にしてしまってごめんなさい。もう一人にはしませんから」
「…はい…」
二人の様子を見た富弥は、葉月から離れる事にした。
「葉月、じゃあ、俺はこれで。また羊羹食べに行くからな」
「は、はい。ありがとうございました…」
自分を選べ、と強引に口説いたにも関わらず礼を言う葉月に、富弥は苦笑しながら、もう一度言う。
「俺が言った事、よく考えろよ?」
返事をする間もなく、富弥は片手を上げ、去って行った。