第1章 たいむとりっぷ
始まりは―
20××年、葉月は重い防具や竹刀袋に、更に自分の荷物をスーツケースに入れ、ゴロゴロいわせて歩いていた。
こどもの頃から続けてきた剣道の昇段審査会場はまだ遠い。
「まだ着かない…あとどれくらいなんだろう」
スマホを立ち上げ地図を確認する。
地図を見る限りではもう、すぐそこまでの距離だ。
ふと。
それまで天気がそこそこ良かったはずが、急に薄暗くなる。
あ、という間もなく、雨が一粒一粒落ちてき、その雨粒はすぐ数えきれない程の雨粒から滝のような流れになり、葉月は慌てて近くの大木の下に駆け込む。
「雨だな…どうしよう、間に合うかな」
会場へ一応電話をしておこうと、スマホを再度取り出した瞬間。
雷が落ち、目の前が真っ白になった。
「!!」