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心のキャンバス

第4章 私の色


「ただいまー。」

シ――――――ン…

どうやら、私以外全員居ないようだ。

『誰も居ないのか…。』

私は、真っ直ぐ自分の部屋に向かった。
荷物をベッドに放り投げ、
勉強机の椅子に腰を掛けた。

『一希先輩…。部長達の言う通り、
 変態かは知らないけど、確かに変人。』

クルクルーと椅子を回転させながら、
私は先輩の描いた絵を思い出した。

『あの絵のタッチ、色使い、陰陽。
 どこであんなのを学んだんだろう。
 そして何より、あの笑顔…。』

あんなにも、
楽しそうに描く人は初めて見た。
あんな風に描けたら、
どれほど良いだろう。

あの後、何故か部長達は来なかった。
一希先輩によれば、次の展示会について
どこかで話しているのだろう、とのこと。

「そろそろ、春最初の展示会がある。
 俺らは、ボランティアで美術展の
 準備を手伝ってるんだ。」

顧問がもう少しまともな人なら
良かったのだが、どうやら顧問と言っても
無理矢理任せられたようで、
絵に関しても無知な上に関心がないのだと。

その為、ボランティアをして
その褒美として、ただで出展させて
もらっているらしい。
出展するのにお金がかかるとは初耳だ。

『ま、ただで出展出来るならいっか。』

そして、先輩は描き終わると直ぐに帰った。
何でも、大切な用事があったらしい。

『どうせなら描き方教わりたかったな。』

変人ではあるが、才能があることは確かだ。
私は先輩を見直し、尊敬と憧れを抱いた。
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