第5章 Memories
朝練だ。起きて、顔を洗って、制服に身を包んで、朝御飯を食べて、歯を磨いて、荷物を抱えて家を出る。
一応はす向かいのあの家のインターフォンを鳴らす。
「……」
出ない。寝てるんだかもう出たんだか。
数歩歩いて男はあるひとつの考えが浮かぶ。
(まさか菅原さんと会ってないよな)
心臓がドクンドクンと予感を告げている。
進行方向は学校、向かうべき目的地は岡の大きな木。
少し早足な月島を集合場所で合流した山口が追いかける。
「ツッキーおはよ!」
「うん、おはよ」
「何でこんな急いでんの? ま、まさか遅刻……!?」
「……ある意味遅刻かもね」
坂をイッキに駆け上がり遠巻きに木の立つ方を向き、その姿を探す。
「ありがと! めっちゃ嬉しい!」
聞き覚えのある声がする。菅原だ。
ついにその姿を捉えたときにはすでにつばめは菅原の腕の中に収まっていた。
「!」
残念ながらその状況を見た月島は長い付き合いのせいか悟ってしまった。
つばめが菅原に惹かれ始めていることを。
それと同時に、引き裂かれるような胸の痛みが自分自身がつばめを好きだと告げた。