第5章 Memories
「なぁ渡さん!!」
「……何?」
面倒なやつがやって来たと言わんばかりの顔を向ける。日向のことは嫌いではないが質問の内容がいつも大声で言われるのに困ることばかりなので少し頭を悩ませていた。
「菅原さんを大会に呼ばないの!?」
月島の次はまた違う人かと教室に少し嫌な空気が走る。つばめはアウェイな雰囲気になっているのを何となく察知しため息をついた。
「呼ばない。蛍ちゃんも忠も呼ばない」
「なんで?」
「来てほしくないから。それにバレー部は部活でしょ?」
日向が続けて質問しようとしたところで「つばめー!」と呼ぶ声が教室中の意識を集めた。日向より小さい男、西谷夕だ。
「あ、慇懃無礼の人……そうそう、西谷先輩」
「く~っ! もっと俺を先輩って呼んでくれ……!」
クラスのみんなが注目したのは西谷が登場したことより"慇懃無礼"など普段なら絶対使わない単語を口走ったつばめだ。
どこからか変わったやつだと声がし、それから教室は落ち着いた。
「どうしたの?」
「ん」
「ん?」
差し出された携帯を見て自分のものも差し出すとそのまま持っていかれ連絡先に「西谷夕」が追加されていた。
「この間は連絡先交換できなかっただろ? お前面白そうだからな」
「そう」
「じゃあなっ」
「うん」