第4章 Pet
つばめはドアを開け、裸足でスニーカーの踵を潰しながらこっちへ向かってきたがすぐに立ち止まり、室内に向かって「ちょっと外します」と声をかけてこちらへやって来た。
「お疲れ、つばめちゃん」
「なんで来たの?」
「気になって」
「ありえない。見られたくなかった」
「ごめんごめん、好奇心には敵わなくって」、
「好奇心……なら仕方がないね」
西谷はもちろん間に入ることなど出来なかった。
どんどん流れていく会話の言葉を拾って考えていくとおそらく女がくせ者であることは察知した。
「で、その失礼な人、誰?」
「西谷夕、2年3組男バレリベロ、潔子さん一筋だ!!」
その場が静まり返る。
つばめからしてみれば初対面の男が知らない単語を綴り背中に書かれた「慇懃無礼」と書かれたTシャツを自慢げにこちらへ向ける。
「それはあなたに欠けているものだと思うよ」
「うっせー! 何かだよ!」
「慇懃無礼」
「い、いんぎん……?」
「言動が丁寧すぎてかえって失礼なことよ。あなたは失礼になるほどの礼儀がないように見える」
「それを言い切っちゃうお前も失礼だべ」