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一泊二日温泉旅行に行ってみた【実l況l者/全l身l組】

第10章 am 11:47


お昼時だからか人もまばらで、足場が悪く狭い道でもすんなり進むことができた
岩山を進んで洞窟の内部へ入ると、気温が下がり、薄暗い

この奥に何があるんだろう…?

期待と少しの不安が入り混じる中、先導してくれているキヨくんが声を掛けてくる

「もう着くと思うから、ちょっと下向き気味で歩いて?」

はーい、と軽く返事をする
まぁ前を見てもキヨくんが壁になってるから、すでにあんまり見えないんだけどね…



辺りが明るくなり道が広くなってくると、二人が足を止めた

「はぁ……すげえな…」

「ゲームの世界に来たみたいやね…」

耳に入る感嘆の声
私の視線は下に向けたまま

「え、何?早く見たいっ!!」

「ふふ、じゃあカウントするからね。
5!」

「「4!3!2!1!」」

「…っ…!」

思いきり顔を上げた先に広がる景色に、思わず息を呑む

洞窟の最奥は開けた空間になっていて、上部に僅かに空いた穴から差し込む陽の光がキラキラと辺りを照らす
まず目に飛び込んでくる色とりどりのステンドグラスで出来た小さな祭壇
その中には聖母像が佇んでいる
天井から降り注ぐ光が祭壇を包み込み、幻想的な雰囲気が私たちの前に広がる
まるでお伽話の中のような特別な空気に、瞬きすら忘れてしまうほど

「いやーマジでこれサプライズ成功だわ!」

「本当は夕方に来ようと思ってたんやけど、先見た方が少しでも元気でるかなって。柚月ちゃん、こーゆー場所好きそうやから調べてたんよ。」

私の表情を確かめると楽しそうにはしゃぐキヨくんと、はにかんで説明してくれるレトさん

「あ、夕方やと夕陽がステンドグラスに反射して、洞窟全体が万華鏡みたいになるんやって。めっちゃキレイって有名らしいで?」

「レトさん、すっ…げぇ調べてたもんね。」

「…そう言うことは、バラさんといて…。」

カッコ付かんやん、と抗議しているレトさんの耳は赤く染まっているように見えて

いつもならここで会話に入る筈なのに

目の前の吸い込まれるような美しさが、私の心を大きく揺さぶって、言葉に詰まる

この景色を見せるために、私を元気付けるために、色々計画して、調べて、連れて来てくれたレトさんとキヨくん

今伝えたいことは
一番に伝えたいことは


『ありがとう』って言葉
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