• テキストサイズ

一泊二日温泉旅行に行ってみた【実l況l者/全l身l組】

第5章 pm 3:58


「え、まだお参りしてないけどっ?!」

私の言葉には答えず、無言で手を繋いだまま階段を下りていく

しばらく下りたところで足を止め、私に向かい合う
繋いだ手を離し、ようやく口を開く

「今から言うこと、神様にも聞かれたくないから。」

つい数分前までの怒りや悲しみの感情は見えず、真っ直ぐで力強い瞳

その真剣な顔付きに胸が高鳴る
息を呑んで、言葉を待つ

「俺さ、さっきの柚月の作り笑顔見て思ったんだわ。
自分の感情で柚月を振り回して、あんな顔させるようじゃ、まだまだだなって。
すげえカッコ悪かったし…情けなかった。
…そんなんじゃレトさんには勝てねぇわ。」

ふぅっと息を吐き、だからさ、と続ける

「ちゃんと自分に自信を持ってから、そん時ちゃんと言うわ。」

そう言って柔らかく微笑む

キヨくんの言葉がグルグルと頭を駆け巡る
その言葉の意味が脳内に溶け込むと、心臓の鼓動が段々と速くなるのがわかる

「ちょ…何ポカンとしてんだよ。」

「え、あ、ごめん…。」

「ふっ、もしかして別のこと期待してた?」

意地悪な笑顔でそう返す
すぐに否定はするものの、私の顔は多分真っ赤

そりゃだって…
告白されると思ったから…
てかもうそれは告白予告、だよね

尚もからかってくるキヨくんは、いつものキヨくんで
少し安心したのと同時に意識せざるを得ない状態にさせられる

「とりあえずさ、仕切り直しってことで。」

と、再び差し出された右手

「嫌じゃなければ。」

左手を伸ばせば、ギュッと優しく握ってくれる大きな手
伝わる温度は熱い

すると、あ、っと思い出したかのように呟く

「…浴衣、すげぇ似合ってる。」

それだけ言うと、手を引かれ階段を下りていく

素っ気ない言い方と言葉の内容のちぐはぐさを感じキヨくんを見ると、髪の隙間から赤くなってる耳が見える

照れてる…
思わず頰が緩み、ありがとう、と返す

この大きな手から伝わる熱に浮かされるようで、胸の高鳴りはしばらく止まることはなかった
/ 51ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp