一泊二日温泉旅行に行ってみた【実l況l者/全l身l組】
第5章 pm 3:58
境内はこじんまりとした広さになっており、人影もなく、静けさに包まれひっそりとしていた
「はぁ着いたぁ!」
「柚月、体力なさ過ぎ。」
息を整えて、キヨくんの手を離そうとすると、ギュッと力を込められる
「ほら、行こうぜ。」
グッと引っ張られ、手を繋いだまま歩き出す
いつもより強引な行動に心臓が早鐘を打つ
「ここ、何の神様なんだろうな。」
「え、うーん、なんだろうね。
こんな場所にあるなら、商売繁盛とか?」
「なるほどねー。
まぁ神様なら何でも聞いてくれるっしょ。」
そう言って笑う横顔
整った顔のラインが綺麗で見惚れてしまいそうになる
そしてこの適当さ、もとい気楽さが一緒にいて心地良く感じてしまうところなんだと思う
「柚月は何お願いすんの?」
「えー…健康、とか?」
「ふっ、ババアかよっ!」
「わ、それ失礼だよ!キヨくんは?」
うーん、と考えるような顔をして、そう言えば、とこちらを見る
「気になってたんだけど、何でキヨ“くん”?」
「え、なんでかな…」
出会った頃から幾度となく「キヨと呼んで」と言われていたけれど、くん付けで呼び慣れてしまったため、今更変えるのも違和感があり、そのままにしていたことを思い出す
「レトさんがくん付けで呼んでたから移っちゃったのかな。」
と答えると急にキヨくんの歩みが止まる
同時に握っていた手に少し力が入り、痛みを感じる
驚いてキヨくんを見ると、大きなため息を吐いて、すごく怖い顔をしていた
「…キヨ、くん…?」
「…また、レトさん?」
「え…?」
「レトさんのこと、好きなの?」
それは予想もしなかった言葉
冷たい風が私たちの間を吹き抜ける