一泊二日温泉旅行に行ってみた【実l況l者/全l身l組】
第5章 pm 3:58
レトさんを一人旅館に残したまま、私とキヨくんはひとまずメインストリートまで出ることにした
旅館に置いてあった周辺のミニマップを頼りに慣れない草履で歩く
「レトさん、ほんと大丈夫かなぁ。」
「んーまぁあーゆーのって横になってれば良くなるんじゃねぇの?」
「そうなんだけど…なんか心配だなぁ。」
「…あのさぁ、今俺といるんだけど。」
「え?」
「…あーいや、やっぱいいや。」
一瞬空気がぴりっとしたような気がした
でもキヨくんを見ると、いつもと変わらない表情
聞き取れなかった訳ではなくて
普段なら絶対に言わないことだったから少し戸惑ってしまう
気持ちを切り替えたくて辺りを見回す
「あれ?」
「ん?どした?」
「こんなのあったっけ?」
脇道を見ると神社の鳥居が見える
旅館に行くまでに一度通ったのに、その時は気が付かなかった
「あー、マップにも書いてねぇ。
もしかして地元の人しか知らない穴場ってやつ?」
「ちょっと行ってみようよ!」
「おう。」
鳥居をくぐり境内に続く階段を上る
木々で覆われていてうっそうとしているが、別世界に来たような不思議な感覚になる
「ちょっと、待って…!」
日頃の運動不足と歩きづらい草履のせいもあり、少し上っただけで息があがる
先を歩くキヨくんが、しょうがねぇなと言わんばかりの顔をして、右手を差し出した
「え…?」
「…引っ張ってやるから、掴まれば?」
「あ、…うん。」
左手を伸ばせば、キヨくんから握ってくれる
こんな時の彼は、本当に優しいし頼りになる
私の速度に合わせてゆっくりと上る
階段は思ったよりも長くて、上りきる頃にはほんのりと汗が滲んでいた