《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第2章 謎はブラックに始まる
「ゆりくん、ここはブラック工場だよ? みんな自分の仕事をこなすのに精一杯で、疲れ切っている」
「はい……」
「加えて工場内は常に大きな機械音。おまけに大型機械やベルトコンベアが並んでいて、作業場からは入り口は見えない。たとえ、所長が襲われていたって、誰も気づかないよ」
チョロ松警部が得意気に話す。
なるほど……。確かに納得できる。
さっき工場の裏庭で会った男性もボロボロだった。みんながあの人のように疲れ切っているとしたら、周りにまで気を配る余裕はないのかもしれない。
ただ、それだけ仕事がキツイとなると、また別の問題が出てくる気もするけど……。
「あの、警部、そんなに仕事がハードだなんて、労働赤塚基準法に違反していませんか?」
私が尋ねると、チョロ松警部はさらりと答えた。
「うん、そりゃ、違反しているだろうね。だって、『ブラック』工場だし」
「え! 工員を不当に働かせているんですよね? 注意しなくていいんですか!?」
「うーん、でも隠しているわけじゃないしね。堂々と『ブラックで〜す!』って言っちゃってるから」
「はい!?」
チョロ松警部は、ニコニコと笑う。
「ま、言っちゃったもん勝ちだよね」
「え!?」
そういうものなの? 確かにこっそり隠して働かせているわけじゃないけど……。でも、不当に働かせた時点で罪になるんじゃない? それとも宣言しちゃえばOKなんだっけ? 妙にこの工場には甘くない? あれ? あれれ?
私が混乱していると、それまで黙って話を聞いていたトド松先輩が心配そうに口を開いた。
「それより、チョロ松警部、自宅謹慎中でしたよね? 現場に来ちゃって大丈夫なんですか?」
そうだったと思い出し、私も頷く。
「もう大丈夫なんですか? 配属になった途端、警部がいなくなったから、びっくりしました」
チョロ松警部は一週間前から自宅謹慎になっていたのだ。