《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第2章 謎はブラックに始まる
20XX年8月X日。
『ブラック工場』で殺人事件は起こった。
被害者は工場の所長であるデカパン氏。
事件が起こった時、工場には、約100名の工員、数人の事務員、受付係、守衛、そしてマネージャーのイヤミさんがいた。
遺体が発見された時、工場内は昼休み中だった。ただ、昼休みと言っても、全員が一斉に休憩を取るわけではない。
製造ラインは常に稼働している。工員たちは、二班に分かれ、1時間ずつ交代で休憩を取るそうだ。
第1班が11時〜12時、第2班が入れ替わりで12時〜13時に食堂で昼食をとる。
12時50分頃、2班の工員たちが、昼食を終えて戻ってきた時に、製造室の入り口で倒れている所長を発見した。
所長の頭には殴られた跡もあったが、直接の死因は、背中の傷による失血死だ。
鋭い刃物を強い力で押し込まれてできたような傷で、深くえぐられていた。
「う〜ん……。でも、交代で休憩していたなら、製造室にはずっと人がいたことになりますよね? 部屋の入り口でデカパン所長が襲われている時に誰も気付かなかったんでしょうか?」
私が疑問を口にすると、
「そんなことも分からないのかね、ゆりくん!」
凛とした澄んだ声が響いた。
「え!? この声は……」
振り向くと、上司のチョロ松警部が立っていた。
暑くないのかトレンチコートに深々と帽子を被っている。トレードマークの緑色のネクタイが、胸元で誇らしげに揺れた。